vol.3 パワーウェット顛末/松藤 一治[2009.06]
パワーウェットに憧れて、縁もあって奥田さんに師事することとなりました。
積雪した河岸を乗り越え、大振りなタックルを背負い込み、真冬の本流に対峙するこの釣りは、やってみると想像以上に難儀で、それだけに驚きと新しい発見の連続です。
フライフィッシングは本当に深遠ですね。
慣れぬタックルと環境に振り回されて、最初の一匹を手にするまで、長く険しい道のりでした。
心が折れそうになりながら、奥田さんのアドバイスを信じ、ようやく釣れた一匹。だからこそ思い入れの強い一匹です。
記憶に残る釣りは、サイズだけでは決まりませんね。
それにしても、この釣りはそうそう釣れる釣りではありません。
釣れない日、これはこれで修行です。
わずかなりとも鍛えられたのだと信じ、すごすごと釣り場を後にする。そんな日を何度も繰り返しました。
次こそ釣果に恵まれることを夢見て、ただひたすら耐えるのみです。
そうして釣果に恵まれる時というのは来てくれるもので、忠類に行った時は、何故かよく掛けることができました。
でも、なかなか上げることができなくて、これはようやくランディングまで持ち込んだ一匹です。
ランディングテクニックの重要さ、これもパワーウェットならではですね。
そもそも、パワーウェットに憧れた理由は、イトウを釣りたいと思ったがため。
生息数の少ないこの魚を釣り上げるのは並大抵のことではないと覚悟をしてはいたものの、厳しい環境の中で難しい釣りを強いられるような、ホントとんでもない釣りです。
寒さに凍え、腕のなさを嘆きながらも、奥田さんの叱咤激励の声を受け、ひたすらキャスティングを繰り返し、どうにか釣りを続行。
そうしている内に、不意に竿先に重みが。
自分でも情けないほどあたふたし、奥田さんに手伝ってもらってどうにか無事にランディング。
念願の、そして感激の一匹です。
釣れる時というのは不思議ですね。その日は立て続けにもう一匹。
今までの苦労がいっぺんに吹き飛びます。これだから釣りは止められなくなります。
確実にリリースを済ませ、実に感慨深い一日となりました。
どうにか釣れるようになったとは言え、それでもまだまだ魚は簡単に釣られてはくれません。
わずかな可能性に賭け、それと技術の向上も目指して、奥田さんとあちこち釣りに出かける日々。
ホント、いろんなとこに連れ立って釣りに行ったなあ。
少しは形になったと思ってはいるのですが、たまに釣れるともう一杯一杯で、恰好良くランディングを決めることができません。
キャスティングからランディングまで、この釣りはトータルなテクニックが要求されますね。
不格好ながらも、やっとの思いで釣り上げたサハリンのサクラマス。
フッキングした後のやり取りからランディングまで、本当に学ばせてもらいました。
こんなのを国内でバンバン釣り上げることができるような、凄腕の釣り士になりたいものですね。