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Fisher's Column

vol.14 スペイ格闘記 / 吉野 康之 [2018.01]

本当なら、このコラムは私がスペイキャスティングの練習を始めてから、それなりに出来るようになる過程を書くつもりでした。 奥田さんからの指導や自分で工夫した練習の数々、そして最後には、初めてスペイで釣りあげた魚の写真を掲載するはずでした。
初めに言っておきます。
本格的にスペイの練習に取組んでから約一年。いまだ実戦で使えるどころか、初めに習得しなければならないロールキャストさえ出来ていません。
こんな段階でのコラムです。普通に他人が読んで楽しいお話ではありません。ただ、今の段階の、自分の記録として残すつもりのものであることを始めに言っておきます。

同じパターンでのスランプ

このHPをご覧の方なら昨年の4月に私のスペイの動画をご覧いただいた方も多いと思います。ご一緒に釣行したことのある方なら尚更ご記憶もあるでしょう。奥田さんからもいたくお褒めの言葉をいただきました。今見ても「結構出来ている」感じです。 
しかし、ここからです。自分では練習しているつもり。進歩しているつもり。
また出来なくなりました。オーバーヘッドの時と同じです。この時の様子はコラムVol.13に書いた通りです。
同じことが起こりました。私の同じ過ちです。
何かを始めて習う⇒素直に、無心にその練習を行う⇒いったん出来るようになる⇒出来た!出来た!(結構ほめられたりする)⇒チェックせずに(このころは理解が浅いので、そもそもチェック出来ない)自己流のキャスティングを繰り返す⇒ますます、投げれない⇒釣れないし釣りをしても楽しくない・・・・。同じことの繰り返しです。
なぜ、できなくなるのか。今思うところを記します。

理解していない。

まず、仕組みを理解していないことです。 フライはなぜ飛ぶのか、ロッドはどう動けばいいのか。なぜそうなのか。どうすればそう動くのか。その時身体はどう使えばいいのか。その動きをするのにどう練習すればいいのか。その動きをどうチェックすればいいのか。動きを定着させるには。なぜ飛ばないのか。どこが悪いのか。どう直せばいいのか。 
もちろん奥田さんのレッスンでは教えてくれています。でも本当に理解したか?
レッスンで教えてもらう。メモを取って、写真を撮って、動画を撮って。・・・これで出来たつもりになっている。本当は理解していないのに教えてもらうことで出来た気になることです。
奥田さんが、ある日のレッスンの初めに「吉野さん、今日からレッスンの時、メモ取るな。写真も動画も撮るな。今日ここで覚えて帰らないともう出来ないと思ってレッスンしろ。写真や動画撮って満足しているからいつまでたっても上達しないんだよ。毎回、同じところに戻っているじゃない。今日のレッスンは今日覚える。頭と身体で覚える。」
厳しいですがその通りです。今まで何回も奥田さんのキャスティングの写真や動画を撮影しました。でも、ちゃんと理屈の理解とチェックポイント、自己点検の方法を身につけないと後で見ても何の意味もありません。そんな中で一人で練習しても何の意味もないどころか自己流の癖がつくだけでやらないほうがましです。私は約1年間(今もそうかもしれませんが)全く無駄な練習をしてきたわけです。
本当に自分は今日のレッスンを理解しているか?「レッスンを受けたこと」だけに終わっていないか。出来るようになるレッスンはレッスンを理解したかにつきます。

自分の理解度を図る一つの目安があると思います。
疑問が湧いてきているか。その疑問を言葉で表せるか。
理解していれば、やっていくうちに疑問が湧いてくるはずです。この風でも同じ角度の振り方でいいのか?ラインが変わったときの同じ動きでよかったのか?などなど 。
もし、疑問が湧かないようだと、理解していない証拠だと思います。もっと正確に言うなら、疑問もわかないほどしか理解していないことです。理解していれば、やっていくうちに疑問が出てきます。疑問を聞けば奥田さんは答えてくれます。でも、疑問さえ出てこないとすれば。こんな程度の理解で、自分で練習したって、自己流の一人よがりの悪い癖だらけのものになるの当たり前です。
聞くことは、恥ずかしいです。とても勇気がいります。でも聞こうと思うと考えますよね。ここが大事だと思います。でも言葉で聞く内容が表現できれば、半分ぐらい回答に近づいているものだと思って自分の疑問を深めてみましょう。
私も一度だけ言われたことがあります。「吉野さん。いい質問が出るようになったね。すこし理解している証拠だよ。」

練習の中心は「復習」(3日目の悲劇)

スペイキャスティング

年末のレッスン。といっても他の仲間は、実釣+忘年会。私は3日間、キャスティングレッスンです。
第1日目、 2日目、チョット、コツをつかみだす。2日目終わるころには、結構飛ぶようになってきた。奥田さんからも「少し良くなったじゃない」とのお言葉・・・。
次の朝、レッスン開始です。前の日「良くなった」とのお言葉をもらい、こちらも「もう次のステップにいってもいいんじゃない?ひょっとすると今日あたりから『よし、実釣してみよう』とか『次の段階に行ってみよう』とか行くんじゃない?」ぐらいの気持ちです。
奥田さんから「少しウオーミングアップしておいて。」と言われ、私的には「昨日、ジャンプロールが出来ていたんだから、ちょっとペリーポーク先にやっておいて、奥田さんに「おっ、出来るじゃない」ぐらい言わせようじゃないの。」ぐらいのつもりでやってました。
一人でペリーポークをやって1時間、なぜかまた、前日の終わりのようなループが出ません。でも「昨日は出来ていたじゃない。風が昨日よりきついから?川の流れが違うから?」唯々、首をかしげるだけの時間が過ぎていきます。
奥田さんが近づいてきます。何だか泣きたくなる心境。
「吉野さん。なんでまた出来なくなったかわかる?」「えーっと、風に対応したロッドの角度になっていないからです。」「違います。」  
私「リフトしたあと右手が平行にスイープしてないから?」「全然違います。」
奥田さん「昨日、最後のほうに少し出来るようになったのが、身について出来るようになったと勘違いしてるからだよ。いい、さっきウオーミングアップしてって言ったよね。それって昨日の復習をしろって意味でしょ。誰が勝手に次のステップやれって言ったのよ。出来もしないのに、勘違いで出来るようになった気になって、勝手に次のことするから、また、前の悪い癖がでて、昨日までやったことが台無し。このまま帰ったら、また出来ないところに逆戻り、そこでまた、自分勝手な練習して出来なくなって、次のレッスンははじめからやり直し。今までこの繰り返しなの。わかる?」
奥田さん曰く「誰でも崩れる。僕でさえ今回のカムチャッカの前にキャスティングが崩れて、まったく飛ばなくなった。何度も言っているように、出来なくなったら、出来るとこまで戻ってやり直すしか方法はないよ」

今は本当にその通りだと思います。でも少し前の私は腹の底に入っていませんでした。
一つ出来ると次に行きたい。これって人情ですね。でも何かが出来るようになる過程においては、相当手ごわい難敵です。特にスペイキャスティングの場合、自然な体の動きとは言えない手首の角度だったり、身体使い方があります。一つのことに集中して練習すると前のことが出来なくなるようなことがよく起こります。
こんなとき、昨日できた自分が今日のスタートラインだと思っているとトンデモないことになります。
今日のスタートラインは、昨日の初めからのスタートです。
練習は、復習が中心。そして、少しでも出来なくなれば、勇気をもって前に戻る。そして何よりも「丁寧に練習する」ことのようです。
前に戻ることは勇気がいります。でも、出来るようになりたいなら、出来なくなったら前に戻る。絶対に、出来ないまま次に行かない。
奥田さん曰く「よい練習は、良い結果を生む」らしいです。やっとこのことが分かってきました。

攻めの釣り出来ていますか

奥田さんに釣りを教えてもらっている人は同じだと思いますが、「攻めの釣り」をしろと言われますよね。
上達したいなら、一度いい思いをした場所に行くな。一度そこで、このフライで釣れてしまうと、毎回、同じ川、同じ場所、同じフライでしかやらなくなって、そこ専用の釣り人になってしまう。上達したければ、釣れた場所に行くな。 とか… 目標をもって釣りをしているか。次の目標がしっかりあって、いつまでにこれが出来るようになって。次のステップはこれで・・・。といったように 常に「攻めの釣り」が出来ているかを言われますよね。
実は、私の今年の目標は、「夏のイーチャ川をスペイで釣ること」でした。昨年の目標は「夏のボルシャヤ川をスペイで釣ること」でしたが、「スペイ」は、今書いたよう全然できずに、釣りのほうもほとんどボーズでした。 ここで「夏のイーチャ川をスペイで釣る」目標にしたわけです。これでも結構な目標と思ってました。

スペイキャスティング

ある日、北海道で釣行。千歳空港から釣り場に向かう車の中で。
「吉野さん。夏のイーチャをスペイで釣る目標だけど、本当に攻める気持ちで言ってる?前のイーチャは爆釣したよね。スペイで釣るのはランクアップしているけど、どこか甘えてない?」「まあ、スペイできなくても、オーバーヘッドで、場所はどこどこで、なら釣れると思ってるでしょ。」「もう一回、自分を見直してみて。そんな気持ちなら、イーチャ行く必要ないよ。」
痛いとこ突かれました。その通りです。もっと言うと、奥田さんのいないところはオーバーヘッドで釣りしようか。ぐらい考えていました。完全に守りの釣りです。攻めの考えでイーチャを目指すのならいいのですが、初めから逃げ道。しかも経験済みの逃げ道を作っての釣りです。きっと奥田さんの目の届かないところではオーバーヘッドで釣っている自分がいました。
一晩、考えました。あと半年余り、出来るだろうか。一人だけボーズで帰国の不安。
今の目標は、6月のボルシャヤ川しかもスペイでの挑戦です。
まだ、自分自身の感じも奥田さんからも「OK、いけるよ」の合格になったわけではありません。なにせまだスペイは実戦導入さえ出来ていない状況です。
いま、まさに6月に向け格闘中です。「攻めの釣りができるように」

最後に

初めに言ったように、今回は区切りがついた後のコラムではありません。魚が釣れた話など全くありません。 それでもあえてコラムにしたのは、同じ様につまづきながら取り組んでいる仲間の方がおられると思います。そんな方々の参考になればとの思いと、途中だからこそ書けることがあるだろうとの考えからです。
この先の結果は本当に分かりません。
奥田さんによく言われます。「吉野さんは、川のない淡路島で一人でやっていくのは偉いね。」と。
いえいえ、どこにいようとやるのは自分一人ですよ。みんな同じです。さあ、また来週はレッスンです。

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